火曜の女

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火曜の女

 仕事を終え家に帰ると、大阪に単身赴任中の夫の孝志が、ソファーに座りテレビを見ながらビールを飲んでいた。 「おかえり。久しぶりだね」  私の言葉に孝志は、こっちで仕事が入ったからとぶっきらぼうに答えた。結婚して五年目。その半分以上が別居生活という、子供のいない私たち夫婦の関係は冷えきっていた。  孝志の転勤が決まった時、私は仕事を辞めて、一緒に転勤先に行くと彼に伝えた。しかし孝志は、自分の転勤で私が仕事を辞めるのは嫌だと反対し、結果、単身赴任となった。  それが優しさからの本心だったのか、それとも私と離れて自由になりたかったのか、今となってはわからない。 「最近、何か変わったことはないか?」 「変わったこと? 別に何もないけど」
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