水曜の雀

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水曜の雀

 夜に降り出した雨は、お日様が出て間もない頃に止んだ。巣から出た僕は、いつものようにあの人の庭に向かう。  僕はあまり同じコースを飛ばない。変えないほうがいいのだろうけど、それだとなんだかつまらない。  雨上がりは空気がきれいで澄んでいて、とても気持ちがいい。ここ最近は少し涼しかったけど、今日はきっと暑くなる。  こんな朝に、あの人と一緒に空を飛べたら、どんなに幸せだろう、と僕はぼんやりと思う。  いつもの梅の木にとまり、あの人を待っていると、目覚まし時計のベルが外にまで響いてきた。珍しいな。たいてい目覚まし時計より早く起きてるのに。 「おはようタナ」  僕を呼ぶ声に振り向くと、昨日の新入り雀だった。隣の枝から、僕を眺めている。どうして僕の名前を知ってるのだろう。
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