木曜の女

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木曜の女

 昨夜は、あまりよく眠れなかった。ストーカー事件はもちろん、由亜との会話のせいだ。  そっとベッドを出て、居間の窓を開けようとした時、ふいに背後から小さな物音がした。振り向くと、パジャマ姿の由亜がこちらを見ていた。寝起きだからか、眠れなかったからか、その顔に生気がない。整った顔が、まるで人形のようだ。 「おはよう。ごめん、起こしちゃったね」  声をかけると、由亜の頬が緩んだ。 「おはようございます。早起きですね」 「なんか起きちゃうんだよね」私は窓を開け、庭に米をまく。 「一軒家に住んでたって知りませんでした。広いおうちですね。それにお庭も素敵」 「旦那の親から、ただ同然で借りてるの。文句は言えないけど、古くてメンテナンスが大変」  由亜はふふっと笑うと、近寄ってきて窓から外を眺めた。
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