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途端に、由亜と過ごした日のことが、ぐるぐると頭を駆け巡り、急激に悲しみが襲い、涙があふれた。
「由亜ちゃん、ごめん……」
昨日の朝、由亜は着替えてから出勤したいと言い、自分の家に帰った。あの時、由亜を引き止めていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。きっと犯人は、ずっと由亜をつけてきて、うちの前で由亜を待ち伏せしていたのだ。
ストーカーを甘く見過ぎた。
夕闇に染まる庭に、ぽつんと残された雀の死骸。その光景は、私のなかで深い後悔となり、暗く揺らめいた。
ようやく涙が止まり、気持ちが少し落ち着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
窓を閉めテレビをつけると、ニュース番組が由亜の事件を伝えていた。
美しい由亜の顔写真が画面いっぱいに映り、事件の詳細が語られる。
それによると、由亜の遺体は鍵のかかった部屋のベッドに横たわっていたという。鋭利な刃物のようなもので、身体中を数十箇所も突き刺されていたことと、部屋を荒らされた形跡がないことから、怨恨による顔見知りの犯行の可能性が高いということだった。
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