金曜の女

4/6
前へ
/56ページ
次へ
 夫の顔をこんなに間近で見るのは久しぶりだ。一重まぶたにすっとした高い鼻、そのほっそりとした顔を、私は昔とても好きだった。  しかしその目の下には、隈がくっきりとついている。 「大丈夫? 孝志も顔色悪いけど」 「大丈夫だ。徹夜明けで寝不足なだけだ」 「徹夜?」 「仕事でトラブルがあって、火曜からずっと東京にいた」 「あ、そうだったんだ」 「とにかく何か作ってやるよ」  そう言ってキッチンに入っていく孝志の後ろ姿を眺めながら、こんなに優しくされるのも、本当に久しぶりだと思った。  私はソファーに座り、ぼんやりと孝志が料理する姿を眺めていたが、ふと、由亜の使っていた部屋を片付けていないことを思い出し、客間に向かった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加