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夫の顔をこんなに間近で見るのは久しぶりだ。一重まぶたにすっとした高い鼻、そのほっそりとした顔を、私は昔とても好きだった。
しかしその目の下には、隈がくっきりとついている。
「大丈夫? 孝志も顔色悪いけど」
「大丈夫だ。徹夜明けで寝不足なだけだ」
「徹夜?」
「仕事でトラブルがあって、火曜からずっと東京にいた」
「あ、そうだったんだ」
「とにかく何か作ってやるよ」
そう言ってキッチンに入っていく孝志の後ろ姿を眺めながら、こんなに優しくされるのも、本当に久しぶりだと思った。
私はソファーに座り、ぼんやりと孝志が料理する姿を眺めていたが、ふと、由亜の使っていた部屋を片付けていないことを思い出し、客間に向かった。
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