金曜の女

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 扉を開くと、そこには布団だけがきちんと畳まれていた。几帳面な由亜らしく、まるで使った形跡がない。  その布団の上で、きらりと何かが光った。  見ると、錆びた銀のような色合いの、円形のアミュレットのようなものが置かれていた。表面に描かれた紋様は古めかしく、どこか不気味だ。由亜の忘れ物だろうか。 「実加子?」  突然背後から響いた声に、私は驚いた。振り向くと孝志だった。 「この部屋に泊めたのか?」 「え、そうだけど……」  私が頷くや否や、孝志は私を突き飛ばすように、つかつかと客間に入った。そしてすぐに由亜の忘れ物と思われる、その銀色のアミュレットをさっと拾い上げた。  と、その途端、驚くことが起きた。  消えたのだ。孝志がつかんだと同時に、まるで溶けるように、アミュレットが消えて無くなったのだ。
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