土曜の女

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土曜の女

「おはよう。昨日はごめんね」  翌朝、いつものように窓を開け、二羽の雀にそう声をかけた。 「誰と話してる?」  すでに起きてコーヒーを飲んでいた孝志が、私の声に応えた。 「あ、雀に言ったの。昨日、餌をあげそびれたから」私は手に持ったパンを孝志に見せた。 「雀?」 「うん。昔は一緒にあげてたよね」 「ああ。今も時々やってる」 「え、今もって……大阪で?」  私の問いに、孝志は「たまにだよ」と小さな声で答えた。それから窓に近寄り、私の手からパンを取り庭にまいた。
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