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「東京と大阪だし、バレるはずはないと思った。木村なんて苗字はよくあるし、最初は独身だって言ってたんだ。だから、お前が俺の嫁だなんて、あいつはわかるはずがなかったんだ。それなのに……」
その体が細かく震えていた。
「お前と同じ会社だってことも、もちろん知らなかった。先週の土曜、あいつから聞いたんだ。同僚だって」
同じ会社? 同僚?
「ちょっと待って。若い美人って、それってまさか……由亜? 由亜のことを話してるの?」
私の言葉に孝志はこくりと頷く。
「嘘……」
途端に、爽やかな朝日が射し込んでいた部屋が、闇に包まれたように暗くなった。そう感じた。
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