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「あいつは何もかも知ってたんだ。あいつは悪魔だ。天使の顔をした恐ろしい悪魔だ。どうして突然死んだのかわからないけど、とにかく死んでくれて、俺は正直ほっとしてる」
「そんな、いくらなんでも、死んでほっとしたなんて」
「お前はわかってない!」孝志は私の言葉を遮るように叫んだ。
「あいつは本物の悪魔なんだ! あいつ、俺が別れたいって言ったら、なんて言ったと思う? 人間を殺すなんて簡単だって笑ったんだ。私はなんにだって姿を変えられるし、なんだって出来る、私を捨てるなら、奥さんを殺してやるって……」
由亜が私を殺す……?
あの朝、真っ白い顔で、私を見つめていた由亜を思い出し、背筋が冷たくなる。
――チュン。 突然響いた雀の鋭い鳴き声。
見ると、さっきまで枝にいた雀が、目の前のリビングテーブルにとまり、私を見てチュンチュンと鳴いている。その瞳は何かを訴えているかのようだ。
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