土曜の女

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 野生の雀がこれほどまで近寄ってくるなんて珍しい。 「雀ちゃん、どうしたの?」声をかけた、その時――。  突風が吹いた。  窓からではない。それは地面から!  同時に視界が白で埋め尽くされ、恐ろしさで目をつぶった。  何が起こったのかわからない。ただ、頭と体がふわりとする。  風が止み、まぶたに強い光を感じ、恐る恐る目を開けた。  眩しさに目がくらむ。 「孝志?」  呼びかけたが返事はない。  ふいに、何かが目の前を通り過ぎた。
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