土曜の女

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 雀だ。そして青い空。眩しいほどの夏空。そこを、たくさんの雀が、くるくると舞うように飛んでいる。  上空にも、右にも左にも、そして、下にも……。  見渡す限りの空とたくさんの雀。私はそこにいた。広い空のなかに浮いていた。  これは、夢?  眼下には、山に囲まれた小さな町。あれは、私の故郷……。  心がほんわかと温かくなる。  なんて平和なんだろう。なんて美しい夢なんだろう。  しかしまもなく世界は静かに揺れ始め、ガクンと意識が戻る。  目の前の雀は消えていた。
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