火曜の雀

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 僕はキナに訊いた。 「キナ、あの人、僕らのこと、いつも一緒だって言った。あの人は、僕ら雀の違いがちゃんとわかってるんだ。普通の人間はわからないのに。すごいと思わない?」  僕の問いに、キナは何も答えなかった。答えないというよりも、聞いたそばから、僕の言葉を忘れてしまったみたいな顔をして、静かに遠くを見つめている。  ふと、葉っぱが擦れる音がした。見ると、僕ら以外にもう一羽、木の陰に仲間がいた。雀の女の子だ。じっとこちらを見ているだけで、近寄ってこない。 「新入りさん? そんなとこにいないで、こっちでみんなと一緒に食べたら?」  気づいたあの人が、新入り雀にそう声をかけた。それなのに新入り雀は、ぷいっとそっぽを向き、そのままどこかへ飛んで行ってしまった。 「恥ずかしがり屋さんなんだね。かわいい」  あの人は、呑気にそんなことを言う。
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