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………なんだ………?
夜になり、俺達と学校で誘ったらノリノリで来たサイファ、怖がりながら興味本意の好奇心で参加したルイの彼女であるカレン、盗み聞きして勝手についてきた学校の風紀を取り締まっているウズメ、反対しながらも心配してついてきたダミアン達と人形を捜索していた矢先だ。
ルイ、カレン、ダミアンチーム。
ウズメ、サイファ、ユーハンチーム。
俺と何故か合わせられたのがカインのチーム。
それぞれバラバラにクーロンのわけのわからなった道や路地の裏を捜索したり、近くの住民に聞いて回ったが見つからない。
今日会ったばかりの俺とカインもそこまで会話をすることもなく、お互い途中で一服して適度に話すカインの話に相槌を打っていたところだった。
カインは始終丁寧な口調だ。育ちが良い方ではなく、すこぶる悪いと言うが、基本的には紳士的つぅか、乱暴な印象はない。
ただ、どっか物凄く変わってはいるが。
「あれ、カレンさんの声では?」
だな。さっきも同じくらい叫んでたし。
「女の人って、すぐに叫びますよねぇ。踏んだら爆発する地雷かうっさい警報器みたいに。ていうか“鉱山のカナリア“ですね、レディーファーストの意味、知ってます?」
女に先に入らせて身代わりにするんだろ?
「何かあったらすぐ叫ぶんで、カナリアには持って来い、なんですよ」
カレンの叫び声がクーロンの通路に響き渡って聞こえてくる。さっきも何回か聞こえてきたが、興味本意で来といて結局怖がってんだもんな。ルイとダミアンは今ごろ大変だろう。
「写真家、なんでしょう?貴方」
不意に俺にそう聞いてきたカインが、時々こだまするカレンの叫び声を聞き流しながら、『退屈』と文字の書かれた顔で俺に聞いてきた。
写真家っていうより、まぁ…そうだな。色んな雑誌とか記事の写真とか撮るからまぁ間違ってないな。見習いだけど。
「見習い、ですか。あまりそういう面構えには、見えないんですけどねぇ」
悪かったな、老けててよ。
「そういう事を言ってるんじゃありません。年齢の割に何度も修羅場を潜り抜けてきたような…そんな面構えだと言う意味です」
モヤモヤと煙る白い煙の先で、緋色の妖しい瞳が俺を覗き見ている。妙にやる気のなさそうな声色だが、内心見透かされたようで心臓を突かれた気がした。
「でも、なんでしょう?やっぱり、年にしては老けてるからですかね?」
童顔の奴に言われたくねーよ。
「老けてるよりはマシですよ。そんな固い顔してないで、もう少し柔らかくしたらどうですか?なーんか、僕のクライアントとそっくりなんですよねぇ?仏頂面」
お前のクライアントとか知らん。
「もうその人、ほんっとに人使いが荒いんですよ。用ができたら依頼の申請もなしに乗り込んできて直接僕を引っ張り回すんです。何度も殺そうと思いました程に、僕を引っ張り回すんですよ?横暴だと思いません?」
何度も殺そうと思った程に引っ張り回されるとか相当だな。まぁ気持ちは分からなくもないが。
____「「いやぁぁぁぁぁぁっっっーーーーーーーーーー!!!!!?」」
…また、か?
場を切り裂くほどのかなり声のような叫び声。今までの叫び声とは違うものに、俺達は一旦会話を中断した。
その場にしゃがんで一緒にタバコを吸っていたカインが立ち上がり、タバコを足で消して俺も立ち上がる。
…様子、見に行ってみるか?
「いいんじゃないですか?カナリアと言っても、だいたい、たいしたことがないんですよねぇ。ゴキブリが出たとかそんなので」
いやでも、今のはなんかさっきよりも重味があったぞ。何回も叫んでたのに聞こえなくなったし。
「そうですねぇ…じゃあ、ぼちぼち向かいます?」
何でこいつあんなに興味あるって言ってたのに途端にやる気ねぇんだよ。
_「おいちょっと!ちょっとそこのあんたら!!」
カインと俺が向かおうと足を伸ばした矢先に、頭上から声が聞こえる。
一旦足を止めて上を見てみると、壁に埋め込まれたような密集住宅のベランダから顔を出して声をかけてきた髪のないおっさんがいた。
この辺りの住民らしい。
騒ぎすぎたのか、眉間にシワを寄せて俺達を見下ろしていた。
「あんたら、もう帰んなっ!!こんなとこ夜歩くもんじゃねーよ!!」
「あぁ、すみませんねぇ騒いでしまって」
「いやいやそうじゃなくってさ!!ほんとここ、危ないから!!襲われねぇうちにさっさと帰んなって!!」
まるで怒ってるように慌てている住民の話に俺達は顔を見合わせた。
襲われねぇうちにって、何?ここやっぱなんかあるのか?
「襲われるとは、何にです?」
「何?あんたら“アレ“知らないでここ来たのか!?」
…“アレ“?“アレ“って何の事だ?
この時点で嫌な予感しかしなかったが、住民の話に俺が聞き返そうとした時_背後からゴトンッと重い陶器のような何かが置かれた音がして振り返った。
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