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1 在りし日
__今となっては懐かしい。
俺も随分歳を食ってきたもんだと思う。
いや、本当はもっと早く死んでてもおかしくなかった。
俺みたいにろくな生き方をしていない人間が、こうやって過去の事を懐かしく思う日がくるなんて思ってなかったんだ。
ずっと、今と先の事ばかりを見て生きてきた。
過去に過ぎ去った出来事なんざ、振り返ってる余裕もなかったからだ。
今の事に精一杯で、どうしようもなくなってしまった毎日。
いつからこうなってしまったのか、こうなるって予想もつかずにいた最後の日は、いつだっただろう…。
二度と振り返ることがないと思っていた過ぎ去りし日に、ようやく今振り返る。
ろくな人生を送ってこなかった。
その一生の中で、俺が過ごしたあの場所の事を思い出す。
今はもうない。
あの九竜城と、そこで出会った奴等の記憶を___
___『思い出して』___
閉ざされた暗闇の中で、あの娘の声が聞こえる。
___『さぁ。早く』___
どうして思い出すんだ、今になって。
___『思い出すんだよ。あんたが全てを終わらせるんだ』____
暗闇の中、遠く過ぎ去っていく、あの“娘“の声が。
_____あれは、ふと思い立ってカメラマンを目指し始めた30代の夏の日だった。
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