3 閉鎖的な日常

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どんな形の人生を送った所で、他からすれば知ったこっちゃない話だ。 どんな親に育てられて、どんな学校へ行って、何をして、卒業して、就職して、生活をして、歳を取って、死んで。 その途中でその人生が本になる人もいれば、後世に語られる人間もいる。そうなれるのはほんの一握りだ。 世界が一億人の集まりだとしたら、たった十人とか、その規模。途中で忘れ去られるなんて事も珍しくない。だからほとんどの人間は、どう生きても関心を持たれず忘れられていく運命だ。 俺もその一人。いつか、この世にいたことすら忘れられる。 今落ちていったガラス玉のように、落ちていく時間があっという間で、地面に落ちて粉々になるのもあっという間。 そこで何か落ちてきた?と上を見たりして存在に気づく奴がいても、数秒後には何かが落ちてきたなんて事は、ただの小さな出来事に過ぎなくなる。 そう出来てる。俺達人間一人一人の運命。 いつかは絶対そうなるんだ。そんなもの、怖がっていたってしょうがない。 それを悟っていつ死んだって構わないと覚悟を決めたのは、まだ小学生のガキの頃だった。 その時は深く考えてもいなかった事だが、思えば毎日毎日、自慢にもならない危ない事をしてきた。 いつか忘れられんなら、いつ死んだって構わない。 だから俺は綱渡りのような毎日を望んで送ったのかもしれない。 今だってそうだ。 えたいの知れない外国のスラムの中に住んでまで写真を撮る。別に好きでやってるわけでもないのに、馬鹿げている。 …はぁ。 俺は一体、何をやってるんだか。
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