3 閉鎖的な日常

25/30
前へ
/280ページ
次へ
「あら、どして?便利じゃん。直接会わなくてもいいし」 直接会わないから、嫌なんだよ。 「私も、ヤスと同じ意見だな」 横で聞いていたダミアンが腕を組んで俺の意見に賛同したのを見ると、えー?と意味が分かってなさそうにカレンが声をあげる。 「どしてー?これが世代間の違いってやつー?」 考えてみろ。チャットってのは要は相手の顔を見ずに文章でやり取りすんだろ?相手がどんな表情でどんな言い方でいってんのか全く見えねぇし、真意が伝わらないだろ。 「えー?そうー?気にしたことないけどな」 「カレンはそうかもしれないけど、文章だけだと相手がどんなことも悪気なく言ってるかどうかなんて分からないだろう?」 「まぁーそりゃそうだけど」 「それにね、人の顔が見えないと妙に強気になったりするんだよ。言わなくて良いこととか、普段言えないことを書き込んだりね。言葉よりも鮮明に人の目に触れるから揉め事が起きるし」 それを終わりにしよったって、会ってるわけじゃないから何発かぶん殴ってそれでチャラってのも出来ないしな。 「な、チャラっ…?」 「え、殴っちゃうの?」 「…ヤス、それでさすがに解決はしないかな」 いや…例えだ。例え。 つい言ってしまったが、全員でそんなマジの苦笑いすることないだろ。 「そう言うわけだから、程ほどにね二人とも。ルイの言った通り、長く公衆電話を占拠する生徒が増えて苦情も来てるんだ」 「言われてみればそうかも。分かったわラウシー!」 「そうだ。ついでだから三人でヤスに撮ってもらうかい?」 「もー!そうしたいんだけど、私今日ほぼ素っぴんだからダメッ!!………それに………どうせなら…あの子も一緒にいたらな」 寂しげにカレンの最後に呟いた言葉が、頭の中で何故かしばらく反響を続けていた。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加