3 閉鎖的な日常

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_____ ようやく一日の撮影と、カンシェンの検閲から解放され、外はもう真っ暗な夜に変わった時間だ。 チカチカと目につく電子板の灯りと、閉鎖されたコンクリートの壁に囲まれ、外の景色も色もまるで見えない灰色と荒廃。 帰り道は玄関市場の見下ろせる鉄骨の橋の道。あまり良い足取りとは自分でも言えない。 シェンの野郎…。 今日撮った七割のフィルムは返せないだろうってどういう事だよ。俺はそこまで危ない写真を撮った覚えはないぞ!ただ校舎を撮ってサイファ達が遊ぶところを何枚か撮らせて貰っただけだってのに!! これじゃ仕事になりゃしねぇ、一体なにが気にくわないってんだよ!! 少しの力でポキッと折れてしまいそうな程細く錆び付いた手すりの格子を蹴りあげたくなる衝動を理性で抑えつける。 学校から直で光明街へ行った足。カメラの入った鞄をぶら下げて、夜も変わらない喧騒と、何処からか聞こえる中国の伝統的な音楽を聞き流しながら、コンクリートの橋を踏みしめた。 __「不機嫌そうじゃん。ヤス」 呼び止められたその声に足が止まる。 ___昨日と同じ位置、同じ体勢。格子の間に足を投げ出し、行き交う人混みと露天の真上で、白く長い足。目立つその足をブラブラと揺らす。 アーモンドのような色をした赤茶色のボブの髪、首輪のような黒いひものチョーカー、カーキ色のブルゾンとヨレヨレした白シャツを着たそいつがまたいた。
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