3 閉鎖的な日常

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…なんだよお前、またそんな汚いとこに座ってんのか。 「特等席。ここは何にも変化がない。だからゆっくりボーッとするにはちょうど良いの」 ぐったりと下を見ていた目が俺の方を見る。茶色い瞳だが、ネオンの明かりのせいか何処か赤っぽくも見える。大きく二重のハッキリとした目だ。 「あんたもどう?」 いい。俺は今気が立ってんだ。 「見れば分かる。私、相手が今どんな気分なのか、すぐ分かるの」 ニヤッと気味悪い笑いを向けるが、何処かそれがミステリアスで色っぽい。見た目はルイとそんなに変わらない少女だ、でもこいつの方が大人っぽくも見える気がする。 昨日の帰りにも鉢合わせたこの少女はいつも夜にはここにいるらしい。大人でさえ出歩くなというクーロンの夜の中に一人で、二人通るのが精一杯なくらいの狭いコンクリの渡り道にビー玉を転がして、一人で手遊びしながら、この玄関市場を眺めているらしい。 こんなとこでそうしてられっと通行の邪魔になるだろ。さっさと片付けて家に帰んな。 「通んなきゃいいでしょ。ここは私の特等席。邪魔なら通らなきゃいい」 通り道を特等席にするくらいならもっとマシな所にしろよ、四六時中そこにいるってのか? 「いるわけないじゃん。昼間は意外と暇じゃないからさ私。こうしてボーッとする時間くらい許してよ」 だったら家でやれと言いかけたが、パッと鉄格子の間から顔を離し、クルッとその大人っぽい顔が俺の方を向いた。 「なんか、困ったことでもあった?」 本当に見透かしているかのように俺にそう聞いてきた。
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