3 閉鎖的な日常

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別に。お前にはかんけーねぇ事だよ。 「お前とか言わないで。私の名前、教えたでしょ?」 もう忘れたわけじゃないよね?とニヤッとしながら首を傾げて俺を見てくる。 あぁ、教えてもらった。けど呼ぶ気はねぇ。 「なんでさ。私があんたみたいなのに話しかけて名前を教えるなんて、相当ない事だよ?」 知るか。 「こりゃそーとー機嫌悪いねぇ」 ニシシッと八重歯を見せて笑いながら、下のオレンジ色の玄関市場の明かりを見下ろしながら笑う。不気味だが不思議とムカムカする感じがない。絵になっているからなのか。 「でもその持ってるもので何となく分かるよ。外からクーロンに来たんでしょ。思い通りに動けなくていじけてるんだ」 頬杖をつきながら、何気なく確信をついてくる。 「ここには意外とうっさい連中いっぱいいるからね。仕方ない仕方ない。でもさ、あんなやつらがいるから、ここって案外捨てたもんじゃないの。私は基本的嫌いだけどね」 あんなやつらって、町内会の事か? 「そ。国なんてさ、こっちの融通も分かんないで口だけ出してお堅いルール敷くから駄目なんだよ。ここで生活したこともないくせにさ。だからあぁいう市民の中で勝手に仕切ってくれる人って必要なわけ。ある程度の融通は分かってるし、利のないことは口も出さないしさ」 でも、私は嫌いだけどね。 一瞬スッと冷めたような目になる。まるで本当はそんなのまるっきりどうでもいいと言わんばかりに。
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