3 閉鎖的な日常

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夜はいつもここにいるのか。 「いつもと言えば、いつも、かな」 そんなとこで足出してると、変な奴に絡まれるぞ。 「もー、そんなこと言うのやめてよねぇ。怖くなっちゃうじゃん」 気だるげにブラブラと比率のいい華奢な長い足を揺らす。思わずその足に目が行くほど長い。 「私には、ここしか居る場所ないから」 だるんと自分の左肩に頭を乗せて玄関市場の明かりを眺めるそいつのその一言はとてもあっさりと味気ない。  座ってるそいつの横で、俺もその市場の様子に目を向ける。露天でタバコを吸いながら酒を飲む男、端に集まって麻雀牌を交ぜる音、配管の唸る音、食べ物の生っぽい臭い、玄関市場の真上にあり住宅のベランダに渇くかも分からない洗濯物を干すおばちゃん。 _「世界就是全部」 ゛この世界が全て ゛ この狭い場所に密集した全てを差して、そいつは…『宵(ヨミ)』は言った。
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