3 閉鎖的な日常

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「夜が一番、全て見える。昼には見れなかった物が全部、映し出される。だから、私は夜が好き」 そう言って鉄格子の間から引き抜いた足をコンクリの地面につけ、立ち上がった。身長も足が長いせいか、ルイくらいはあるように思える。 「鳥籠の中で育った鳥は、外じゃ生きていけない。私もそう。ここ以外の場所じゃ、きっと生きていけない」 ブルゾンのポケットに両手を深く突っこみ、チロチロと燃えているような深紅の色を宿す瞳が俺に向けられた。 「ヤスはいいね。自由に好きなこと、やれてるみたいで」 …別にそんなことないと思うが。なんだよ急に。 「私は出来ないから。あんたが羨ましい」 お前が俺の何を知ってるってんだよ。昨日会ったばかりで。 「私には分かる。分かるから、言ってる」 ポツンとそう呟いた後、足元を見ながらクスッと笑いこう言った。 「今日はダメだけど、明日またここに来てくれたら、面白い所に連れていってあげる。勿論、それも持ってきていい」 カメラの入った鞄を差して、俺にそう告げた。 「夜は撮るななんて言われてるかもしんないけど、無視していいよ。『あっち』はあの人らの専門外…むしろ、あんたに撮って欲しいものがあるから」 …撮って欲しいもの?『あっち』って、何の事だ? 「行けば分かる」 その怪しい微笑は、手元にカメラを持っていたら思わずシャッターを切っていただろう。 ____魔窟の夜に現れる少女の姿は、゛在りし日 ゛が過ぎ去ってもずっと、俺の脳裏に焼き付く事になる。
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