4 巣食う鬼

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____ 「写真ほとんどダメだったの?」 あぁ…。サイファ達の写真とか人が写ってるのはほとんど全部。最悪だ。 「残念だったね。みんなが聞いたら、きっとがっかりするよ」 今日の撮影は、玄関市場だ。ちょっと買い物ついでにルイに付き合ってもらい、開いていないシャッターの前で露店を開いて商売している人間や遊び回る子供…の姿をなるべく写さないように許可を得てカメラに収める。面白くもない撮影会。 当たり障りない写真ばかりだと、流石に飽きてくる。そもそも俺は修行中の身で、この薄暗い場所で撮るのはなかなかハードルが高い。 一度休憩にして、近くの喫茶店に入りナポリタンを待っている間、ルイに愚痴を漏らす。 ルイは目の前で砂糖も何も入れていないコーヒーを飲みながら俺の話に耳を傾けている。右目にかかった赤毛の奥の灰色の目が俺を観ていて、左手でテーブルに置いてあった占いのおもちゃを弄っていた。 日本で百円で簡単に占える物だ。自分の星座の絵に合わせてハンドルを回すと、おみくじが出てくる。 硬貨を入れたルイは、出たおみくじの結果を見て「今日はまずまずか」と結果を呟く。 「これでもっとやり易くなると思ったんだけどな」 これでって、何が? 「学校に行って、サイファ達に紹介したでしょ?あぁ見えて、みんなは顔が広いんだ。学校が始まってヤスが一人になっても、大丈夫なようにしたかったんだけど」 せっかく撮った写真がほとんどダメってなるのは、お手上げかな。とルイが言う。 平気だ、また別の手を考えるから。ありがとうな。しかしサイファ達はそんなに顔が効くのか? 「僕より活発的だから、あちこちに知り合いがいる。もちろんスクールカーストとも。ウズメ君とサイファは顔見知りだしね」 ここは子供の方がコネクションには強い。 ユーハンからもそう聞いた。やっぱりスクールカーストとか言う組織と町内会が幅を利かせているからなのか。 「次は何処に行こう?思いきって、銀流街まで行ってみる?」 あ?あそこは昨日騒ぎが起こってたんじゃないか? 「今日はもう平気だよ。ここで起こる事件は、北南よりだいぶマシなのばかりだからね」 そんなに表は治安が悪いのか? 「もっと酷いよ。今は政府と揉めてるし、だいぶピリピリしてるから行かない方がいい。向こうとここはまた別の世界」 昼間はまだマシだけどねと、運ばれてきたナポリタンに一緒に手をつけながらフォークを片手にそう言った。 昼間…か。昼間はこうしてルイと一緒に出歩いているわけだが、夕方から少しはみ出した夜の帰り道はまだ光明街と自宅のルートしか知らない。来たばかりだ、まだ目新しいことは起きていないが、光明街のあの辺の空気が、ユーハンと来た昼間とは全く違ってた。 煙草じゃない変な臭いと、淫らな格好をした娼婦。酔っぱらいと明らかに正気じゃ無さそうな奴が、ウジャウジャとクーロンの何処からか這い出てきたみたいに、あの劇場の周りもそいつらで染まった。 あまりマスクなんかしたこともなかったが、今度行くときはすべきだと思ったのはあれが始めてだ。 …そういや………どうすっかな、アレ。 「ヤス?もうナポリタン来てるけど食べないの?」 フォークも持たずにボーッとしてる俺を見かねてルイがまた声をかけてきた。 此処で昨日の帰りの事を聞いてみようとしたが、なんとなく言ってはいけない気がして、別に。とナポリタンに手をつけた。 「あの…ヤス」 呟いた一言に、再び顔をあげてルイの顔を見た。
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