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…嘘だろ。
「マジだよ。地縛は大人しいし害は全くないが、近年グェイの瘴気量が増えて撮影師が減ってるせいか、最近こっちじゃよく目玉と口が別々になって壁にめり込んでたりする」
「前あった道がなくなってたり、いつものルートを歩いても違う場所についたり、最後には迷って出れなくなっちまうんだ。おいら一回なりかけた」
「しかも悪いことに、奴等は撮影師の撮影以外で追い払う手立てがねぇんだよ。剣も魔法も、本体の姿は見えねぇし実体もないからな」
ッチ。と舌打ちしながら、セレネは腰にぶら下げた剣の持ち手を突っつきながら苛立っている様子で俺にそう言った。
「だから素人でもお前に任すしかねぇ。異国から来たって聞いたが、今みたいに写真が撮れれば何でもいい」
おい、ちょっと待て。じゃあなんだ?お前らの仕事ってのは?
「あーあれね。おいら達のはフツーに探し物だよ。でも、早くしないと、今セレネが言ったみたいな感じになっちゃうかなーって」
「関係ないならもう行くぞウスラトンカチ。お前は私らの指示通りに動いてればいい。あれの居場所は検討はついてるからな」
暗い紫色の長い髪と、耳と髪に着けた装飾品が翻って再び前へとローグレンと一緒に進みだす。
…ヨミ。
「…そんな睨まないでよ」
ふざけんな!!何も説明もなしでこんなボランティアやらせやがって!!報酬も何もないのに危ない橋渡れるか!!
「全然危なくはないよ。あんな感じで滅茶苦茶になった道を目的地まで整地してくれって話だし」
じゃあ俺がバラバラになってここのきったねぇ壁の中に埋まる可能性は!?
「この頼み事を受けても受けなくても、いつかやられるだろうね。その時に自衛できる術がないかあるかだけ」
この不可視だけの話だと思ってるなら間違いだよ。
気だるげに頭を掻いたヨミは、先に煤みだすセレネ達の後ろ姿が離れるのを見て、ゆっくりと長い足を前に出して進み始めた。
ここだけの話じゃないなら、元いた西城路でも起きるって事か?
「このまま放っておくとね?最近、熟練だった撮影師が外で事件に巻き込まれて以来、誰も撮れる人がいないの。“要外五級“の害のないグェイですら野放しにしてさ」
今はまだ向こうに影響が出るほどではないが、何度かグェイが繁殖したままの状態になり向こうでは疫病が流行ったり、食べ物や水が全部ダメになったり、理由がない組織間での抗争が起こったりしたことがあったとヨミは言う。
外から見れば、かなりありふれてそうな話な気もするが、これでも中国の普通の町に比べれば暮らしやすいらしい。まぁ汚いと言えば汚いが、そこまで暮らしに不自由しているような感じはしない。
銃撃戦やらトラブルもいくつか聞いたが、そんなの外国なら起こってもおかしくはない。
その他にいないのかよ?まさか、俺にそれ、やらせるつもりじゃないだろうな!?
「どうせ、暇でしょ?たいした写真も撮らせてくれてないんだからさ」
ムカつくな!!何かと思えばこんな面倒事を押し付けて来やがって。やっぱり来なきゃ良かった。第一、俺はよそ者だっつうの!!
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「全然危なくないって言ったなあの痴女」
「どーする?言っとく?」
「やめとけ、またグズグズ言われたら困る。“ハードな仕事になる“って、さっき言ったろ。後は知らん」
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