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「なぁ、ところでなんだけど。ちょっと、雰囲気変わってきてないか?」
_雰囲気?
確かに、このただ暗くて狭い…付け加えれば 変な異臭がする通路を進むだけの退屈しのぎに話し込んでいて気づかなかったが、いつ貼られたのかも分からない漢字だらけの貼り紙、コンクリートの壁がずっと続いていると思っていたのが今見て思わずぎょっとした。
壁が…壁が一面………壊れた仏像だらけだ。しかも、見事に“頭“だけだ。こんだけ、通路の壁になるほど積み上がってる。クーロンでは、仏像の頭だけぶったぎって壁にする趣味でもあんのか?まぁなんでも建築の材料にするってくらいなんだから、別に珍しいことでもないかもしれない。だが、明らかに罰当たりだろ。
物言わぬ仏像の顔が妙に穏やかなのも気味が悪い。ここを作った奴の趣味を疑う、Mr.ラオのいた部屋くらい酷い。
「なんか、ヤバイな、ここ」
俺と同じことを思ってるのか、ローグレンも明らかに引いている表情だ。じゃあ原住民のヨミは平気なのかと隣を見る。
「ちょっ、待って待って怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!なんだこれ!?誰が作ったんだよ趣味悪くない!?」
………
隣から俺の後ろで完全にビビってた。
「いやいや待って。無理。私こういうの無理。こういう明らかな禁足地帯系がちで無理。呪われる、これ完全に呪われるやつじゃん。ヤス、もうちょっとゆっくり歩いてお願い、先に行かないで」
…この反応を見るに、地元民でも全然免疫ないケースらしいな。
お前…グェイなんてもんにはビビらないくせしてこういうのはダメって…つか、シャツあんま引っ張んなよ伸びるだろ。
「やっー!!ちょっと!!今早くなったでしょ!?今速度早めたでしょっ!?」
…マジでビビってる。のらりくらりとしてっから平気なのかと思ってたが案外ビビりか。
「ちょっと!!!?ふざけてる?マジふざけてる!?ほんっとやめて!!明らかにさっきと歩くスピード違うんだけど!?もうセレネに追いつきそうなんだけど!」
うっせーな、シャツを引っ張んなって。
「にやけてんじゃねーよ!?全然感情面に出さないかと思えばあからさまにニヤニヤしやがって!!」
俺が歩く速度を早めただけでヨミの口調が変わった。シャツを片手で掴んで離さず、下を向いてもたれた足でついてきている。
「おいガチャガチャうっせーぞっ!!何ふざけてんだよお前らは!!」
セレネが騒いでいるのに気づいて後ろを振り返ってきた。
背後からだってヤスが!!と顔を伏せて言い返すヨミの声が聞こえたが、こっちを振り返ったセレネの顔がその向こうを見て紫色の瞳がぎょっと見開き、 ギッと俺を睨みつけ大きく手を振りかぶったと同時に叫んだ。
「「走れっっっっ___!!」」
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