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それで怒ったパンダ連れ戻しに来たってわけか。どうしてこんなところでグェイに捕まってたのかは知らないが、もうどうでもいい。
「ちょっと!!あんま壊さないでよ!!ここ崩れたらヤバイのわかるっしょ!!」
「あー?うるせっ!!このふざけた像全部ぶっ壊してからだ!!」
本当にやめてくれ。天井より今にも床が崩れそうだ、大惨事になる。つか、そのふざけた像、もうパンダが全部ぶっ壊してんじゃねーか。原型もなくばらされてんじゃねーか。
「「長ぁーもういいよ!おいらもセレネも無事だから帰ろー!!」」
_「「…………」」
「「あ、いやだからあれは爆弾じゃなかったんだってただの欠陥品!!買ってきたおいらが悪かったんだよ!!」」
_「「………」」
パンダの白と黒のふわふわとした背中が、愛くるしく思えないのは俺だけか?
狭かった空間の壁や床がぶち抜かれ、広々とした空間にはなったが、足元には主にパンダが肉眼では捉えきれない程のスピードでぶっ潰した仏像どもの残骸が広がっている。 ここまでの惨状になるのに、五分もかかってない。
わずかにパンダの真下でまだ動く破片すら、容赦ない踏みつけで黙らせているあの背中。初めてここまでの恐怖を抱いた気がする、特にパンダに対して。
酷い、これは酷すぎる。
_「「…………!!」」
っ!?
ダダダダッッ!!というより、ドドドドドッ!!の方が正しい。ポイッと掴んでいた仏像のなんかの破片を投げたパンダは、急に振り返って俺達の方へ二足歩行で走り出す。
正確には、セレネの方角へ。
「ぬぁっ!?」
お、おいっ!!
まだ剣を出したまま周りを警戒していたセレネが不意打ちを受けてパンダにバシュッと掴みあげられた。反射的に物陰から出て駆け寄ろうとしたのを、ヨミに止められた。
「下手に近づくと怪我どころじゃすまないよ。…あいつなら大丈夫だからよく見て」
は、はぁ?だがあんなパンダとも思えないなんかそういう化物に掴みあげられてんぞ!
あんな仏像を木端微塵にするヤバイのに捕まって無事に済むわけが…。
ないと思うのが、普通だ。
__「「…………」」
「お、……おい、クソパンダ何見てんだよ」
だがまたしても、しばらく掴みあげたセレネの事をじぃーとあるのかないのか分からない模様の中の目で見つめたパンダの行動は、予想を飛び越えた。
__「「……………………」」
____「「……………ンク~~」」
ガバッッ!!と、パンダはセレネを胸に抱き抱え、顔を大きな下でなめ回す。
無言に包まれていた口から、甘えるような、そんな声を発しながら。
_ある意味ここでも、俺の中に戦慄というものが走る。
「だぁぁぁぁっっ!!やめろ!!ベタベタ顔なめ回すんじゃねぇ!!離れろ!!」
_「「ングーングー…」」
「かすっただけだから問題ねーつぅの腕は!!つかてめぇを探しに来てこうなったんだろうが!!」
_「「グー………」」
「はっ!!今さら謝ったっておせぇわ!!お前が森から出ただけで近隣諸国ビビって全勢力配備してんだぞ!!」
…………………………あいつ、正気か…?
パンダと話をしているようなひとり言言ってるのもそうだが、パンダの顔をゲシッゲシッ蹴りまくってる。
容赦なく、さっさと私を下ろせと蹴りまくってるが、死にたいのか。
見ているだけで、肝が冷える。もうとっくに冷えきってはいるが。
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