第1章

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 国が崩壊して、しばらくが経つ。  少子高齢化が年々進み、労働者が減り税の収入が見込めないのに、医療や福祉に掛かる負担が増えるばかりになった。税の制度が根本的に破滅したのだ。  しかもAIやロボットの発展により、人の働き口も減少した。少子化で人手が足りなくなると予想されていたが、実際にはそんなことはなかった。逆に働ける人が仕事に就けない状態になっている。  金持ちはより金持ちになれるが、貧しい人はより貧しくなった。  しかし、金持ちから税金を多く取るにも限度があった。税金を多く取るようになると、海外へ移転や移住する人たちが増えたからだ。  そこで国は、いままでの税金制度を諦めた。税金制度のすべてを自治体に丸投げしたのだ。  そのことによって、自治体ごとに税金制度が変わっていった。  例えば、ある自治体は納税の金額をめちゃくちゃ高くしている。それによって、そこの地域にはお金持ちしか住めないようになっている。  そのため、その自治体の公共の施設はずごく充実している。病院は最先端の精密検査機器が設備されている。学校も生徒10人に対して先生が1人付くという授業をしている。警察も消防も人口の割合から見ても、かなり充実している。    もちろん、この街の施設は、この街に住んでいる住人しか利用できない。いや、施設どころか、この街に入るためにも許可がいる。住人には許可書があるが、他の地域からこの街に入るには入街税という税金を払わなければ道を走ることすらできない。そしてこの街に引っ越そうと思っても、莫大な引越税を支払わなければ、この街には引っ越しできないのだ。  しかし、その逆の街もある。少額の税金を納めるだけで住める街だ。  その街の医療は診療所程度の小さな規模しかない。学校も100人程度の生徒に対して先生は1人。警察も消防も限りなく最小限に済ませている。  この街には貧しい人しか住んでないように思えるが、しかし、そうでもなかったりする。    確かに税金を納められない貧しい人も住んでいるが、ある程度、収入がある人も住んでいたりする。その人たちは自分で選んでお金の使い方を決めている。  例えば、体のことが気になれば実費の病院で検査を受ける。子供の教育が大切だと思うなら塾に通わせる。安全が気になる人は警備会社と契約する。
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