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コウさんがいってしまった。
嫁に行った娘が、コウさんが治らない病気で
しかも余命はいくばくもないと解ってから、毎日のように家に来てくれていた。
緑内障で目のほとんどの視野がなくなってしまった私は
病気のコウさんに、ご飯を作って食べてもらう事くらいしかできない。
頑張って頑張って作っても、お腹に大きな腫瘍ができてしまっているコウさんは
ほとんど食事は摂れない。
娘に強いお薬の副作用で食べられないんだよ、と言われても
時間をかけて作った食事を二口くらいしか食べてくれないと
このまま死んでしまうんじゃないかって怖くなる。
無理に食べさせようとして、娘にその度に叱られた。
「もう無理だって、解っているでしょう?」
だってあなたはいつも家にいないじゃない。
お世話しているのは私じゃない。
「おかあさんだって、お腹痛くて気持ちも悪いのに、
無理に食べさせられたら辛いでしょう?」
食べないと死んじゃうんだよ?
少しでも多く食べたら元気になるかもしれないじゃない。
「おとうさんの・・・癌はもう治らないんだよ・・?
残りの時間を、楽しく快適に過ごさせてあげようって決めたじゃない。」
奇跡が起こって、治るかもしれないじゃ ない!
明日お薬が出来るかもしれないじゃない!
こんなに一生懸命作ってあげているのに、なんでそんなこと言うの!
「おかあさん・・。それはおとうさんのためじゃないよ。
お母さんの満足のためじゃない。」
来るたびにそんな言い争いをした。
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