白毛至上社会

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 ここが天国なのか?  扉の先の世界は真っ白な何もない空間だった。  不思議に思っていると先ほどの神が目の前にいきなり現れたのだった。 「さて、ハクとやら。これからの説明をするので良く聞いておくんじゃよ」  神はどこかノンビリした口調で話し始めた。 「これからって、天国へと行くんじゃないのですか?」 「はて? なんでお主が天国へ行くのじゃ? お主が行くのは現世じゃよ」 「なんだって? どういう事ですか。あなたはさっき天国へは選ばれた者しか行けないと言っていたじゃないですか。あなたと同じく白く美しい毛を持つ私がなぜ選ばれないというのですか!」  神に向かってだというのに、だんだんと語気が荒くなっていくのが自分でも分かったが抑えることができなかった。納得できなかったのだ。  なのに神は不思議そうに首をかしげるだけだったのだった。 「もちろん天国へ行けるのは選ばれた者だけじゃよ。だがどうしてそこに毛の色が関係してくるのじゃ?」 「それは、白が美しく崇高な色だからですよ! だからあなただって白いんじゃないですか。天国に黒助のような真っ黒は似合わない!」  神は私の言葉を聞いて一度ため息を漏らした。 「何を馬鹿なことを。さっきから白だとか、黒だとか言っておるが、天国へ行くのに毛色が関係する訳がなかろうて。まあ、それが分からないからお主は現世にもう一度行ってもらうことになるんじゃがの」 「そんな、おっしゃっているいる意味が分かりません。現世に行って何をしてくればいいと言うのですか!」 「それを探すために、お主はもう一度生まれ変わって現世に戻るのじゃよ。考え天国へ行くには何が必要か考え生きるのじゃな。そうさな。お主のその白に対しての熱意に免じてまた白く美しい毛並みを持った生き物に生まれ変わらせておくの」  神の言っていることを聞いて私は混乱していた。何が必要なのか皆目見当がつかなかった。  私は心の中でため息を吐いた。  せめてもの救いはまた白く美しい毛並みが約束されたということだけか。 「しっかり現世で学んでくるのじゃよ」  神が少し呑気な声を発した瞬間、あたりは暗闇に包まれたのだった。
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