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黒助が死んだという報せを聞いたのは、それから幾日かしてからだった。
黄猫ネットワークを作り上げ町のいたるところの情報を持っている情報屋として活躍する黄虎からの話なのだからそれは真実なのだろう。
どうやら、あの日急いで鼠を捕えようと町を走り回っていた時に車に轢かれたらしい。
その話を聞いて私は黒助を殺した人間を恨めしく思った。
そして、深いため息をつき反省した。
まさか黒助が死んでしまうとは思わなかった。
こんなことになってしまうのならあの日は六匹の鼠でよしとするべきだったのだろうか。
私が家に帰り優雅に昼寝をしている間もずっと鼠を追い回していたのだろう。文字通り必死に――それこそ車が迫っていることに気付くこともできないくらい必死になって。
鼠を捕ったところで、もう公園には誰も待っていないのに頑張っていたのだろう。
なんて哀れで哀しい猫なんだろうか。
いや、誰も待っていないことを知らずに死ねたのは黒助にとって幸福なことだったと言えるだろう。
はあ、それにしても、もう黒助はこの世にいないということなのか。
そう思って私は一度空を見上げた。
空には白い雲が柔らかく漂っている。
まあ、黒助がいなくなったところで大した被害もないし問題はないか。
玩具が壊れたに過ぎないのだから。
今回は潔く諦めてまた新しい玩具を手に入れればいいだけの話だ。
新しく調達するのは多少手間だが、その辺は黄虎にでも任せておけばいいだろう。
ああ、こんな面倒になるのだったらもう少し他の方法を考えるべきだったか。
この反省点は次に活かそう。
それにしても人間には困ったものだ。
いつも傍観ばかりしているのだから、猫の世界に干渉しないでもらいたいもんだ。
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