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次に目を開けた先に広がっていたのは青い空と白い大地だった。
それはいつか見上げた空に浮かぶ雲の上の世界のようだった。
青と白しかない世界は想像以上に美しく、まさに天界ということなのだろう。
喜びに満ちた私は立ち上がろうとした時に初めて体の異変に気付いた。
死ぬ直前は立ち上がるのが困難な程に重かった体が嘘のように軽いのだ。
天界にきて翼でも生えたと言うのだろうか。
いや、そしたら空を飛べるだろうし、そもそも背中に翼が生えている感覚があるだろうからそれは違うのだろう。
単純に死んだから軽くなったということなのだろうか?
不思議に思い前足を眺める。
するとそこにあった前足は一番新しい記憶にあった、あの老いぼれたものではなく、いつかの輝いていたそれだったのだ。
艶やかな毛並みに隆々とした筋肉。それは全盛期と比べてもなんらそん色はなかった。
その肉体を見て、だから体が軽く感じたのかと妙に納得した。
納得すると、心の底から嬉しさが込み上げてきた。
私は自由だ!
唯一の後悔だった肉体の衰えから解放されたということなのだから。
文字通り飛び跳ねた。柔らかくも弾力のある白い地面がいつも以上に私を空高くへ飛ばしてくれた。もう何も恐れるものはなかった。
飛び跳ね、転がりまわり、体の機微を堪能する。
こんなに動き回ったのはいつ以来だろうか。
ひとしきり体を動かし満足した私はだらしなくその場に寝そべる。
気持ちがよかった。
ただ、程よい運動は幸せを運んではくれるのだが、それと一緒に空腹まで持ってくるから厄介ではある。
寝ころんだまま辺りを見渡すが、見渡す限り白い地面と青い空しかないのだ。
確かに白い地面は美味しそうにも見えたが食べられそうにはなかった。
「ハク様。お待ちしておりました」
どうしたものかと考えようとした時にいきなり声を掛けられ、驚いた私は飛び上がり逆毛を立てて声のする方を向いた。
そして、声の主を見つけて私は顔を歪めたのだった。
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