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今日は開店時間を過ぎたのにドアが叩かれた。
「はーい。One Hand Eden、本日の営業は終了してますよ。」
「…閉店後にすみません。」
扉を開けたところに立っていたのは金髪翠眼のとても顔が整った青年だった。外国人、にしては流暢な日本語からするとハーフっぽい。一体何の用だろう。
「どうなされました?」
目の前の青年は言いづらそうに視線をうろつかせた後、口を一文字にして、
開いた。
「ええと、私ホークと言いまして、路上ライブをしているのですが、閉店後でいいのでこの前をお借りしたくて。」
初めての申し出に一瞬思考が停止した。
「…あの、迷惑でしたら断って構いませんので」
不安そうな青年の顔が一年前の俺とダブる。
なんか、放っておけない。
「いい、ですよ」
「へ。良いのですか!?」
申し訳なさそうな表情から一転。破顔してひんやりした手で手を握られる。
と、すぐに慌てたように離された。
「あっ、その、いきなりすみません。」
私、嬉しくて。と、安堵の笑みを浮かべ頬をかいたその仕草に胸がキュッと締め付けられたような感覚を覚える。
この、温かいものはなんだろう。
「いいんですよ。外は寒いでしょう、中にどうぞ。」
「ありがとうございます。」
確か前にもらったココアがあったので、あったかいミルクココアでもいれよう。
店内の食事スペースに掛けてもらいココアを作る。話を聞くところによればホークさんは大きなアリーナとかステージでライブをするという夢を持っているらしい。
ホークさんをこっそり見れば、銀と金色が入り交じる髪はふわふわで、瞳は宝石のように緑が綺麗で、照明に当たってキラキラと輝いて見える。全てが完成された美術品のようだ。
顔が整っているのだから、モデルの事務所とかからスカウトされたりアイドルになったらすぐにでもステージに立てそうなのに。と冗談半分に言ってみたが、幼い頃から歌とギターが好きなのだとはにかまれてしまった。
さすがに失礼なことを言ったな。夢に向かっていく若者の姿はどうにも輝いて眩しく見える。
「…美味しい」
ココアを飲むとほっとしたように一息ついた。
それから、夜遅いのだけどどうしてもとお願いしてアンプに繋がない状態で弾き語りしてもらった。
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