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天空島は南北一・五キロ、東西二キロの小さな島のため、島民はみなこのレンタサイクルで島内を移動する。自動車は研究所用の車両や商店のトラック以外に見たことがない。人間が移動するだけなら自転車で事が足りるし、この狭い島では駐車場のスペースを確保することが困難なうえ、そもそも歩いたって行けるような範囲でわざわざ車の乗り降りや駐車をしたりすることの方がよほど煩わしい。島の人はみな、この最高にエコなこの乗り物を愛用している。 凛はいつも使っている赤い自転車にまたがると、リュックをカゴに入れてペダルを漕ぎ始めた。海沿いの道をゆるゆると進む。凛はここから見る景色が好きだった。観光用に敷かれた遊歩道は、道の両脇にきれいな花が植えられていて、その向こうは爽やかな草原が広がり、さらに先には広大な海、そして空が広がっている。「世界で一番先進的で美しい島」と呼ばれる天空島には、人工的ながら多くの自然が施されていた。 住宅街に差し掛かると同じ制服を着た生徒達が現れる。生徒数もわずかな島内の学校に九年以上通う、いわば幼馴染の関係である彼らは、学校の中でも特別な関係を持ち、島外から来た他の生徒達には立ち入れない空気があった。この島に限らず、開拓団の子供たちというのはこういう結束力があるのかもしれない。
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