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教室に入ると、クラスメイトとそれなりに挨拶を交わして席につく。凛の席は、一番前の窓際だ。三年になると億劫になったのか席替えも行われず、席順は五十音順のまま、春からずっとこの席に座っている。一番前とはいえ、窓際で目立たないこの席はまずまずの居心地だ。 カバンからタブレットや筆記用具なんかを取り出していると、開いたままのドアから森川悠真が入ってきた。毎日きっかり予鈴と同じタイミングでやってくる彼は、凛の後ろの席に座っている男子生徒だ。同じ中学出身だが、ほとんど話をしたことはない。 誰とも挨拶をせず、それどころか透明人間のように気配を消して教室に入ると、するすると足音も立てずに席までやってくる。そして席に着くとすぐに机に突っ伏してしまうのだ。 「えっと、今日の日直はぁ……」 本鈴とともに教室に現れた担任の倉橋が、名簿をなぞりながら言った。 凛が小さく手を挙げるのとほぼ同時に、倉橋も「松上と森川だね」と正解を導き出す。     
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