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席替えがなくなったせいで、日直の時はいつだって彼とペアになる。他の人に言わせれば、それは不運でしかないそうだが、凛は特段いやな思いをしたことはない。号令こそ、暗黙の了解で凛の担当になるが、面倒な日誌や授業の準備なんかは、知らないうちに済ませてくれていて、なんだかんだ楽をさせてもらっている。おそらく今日もそうなるだろう。 「ではこれで朝のホームルームを終わります。進学組は学習室、就職組は教室な。就職組は、次は歴史だぞ」 倉橋がタブレットのスイッチを切りながら声をかけると、隣の席の根元偉春など頭脳派数名が教室を出る。 「凛ちゃん、トイレいこぉ」 斜め後ろの席の野本さくらが声を掛け、鷺口結夏と連れ立って教室を出る。この二人とは、入学以来なんとなく連んでいる。さくらに言わせれば親友ということらしいが、凛はそこまで深い仲だとは思っていない。冷めているといえばそれまでだが、完全に心を開く相手というよりは、とりあえず行動を共にしている相手という方がしっくり来る。特にこの二人でないとだめだと思う点がないからだ。他の女子とだって、たぶん同じくらいには仲良くなれる。 二人の好きなアーティストが出たというネット配信の話を聞きながら廊下を歩いていると、学習室の前で偉春が二年生の女子たちに捕まっていた。目立つ顔立ちではないものの、ちょこちょこ主席を取る上に、サッカー部でもそれなりに活躍しているせいで、女子からの人気は高い。恋い焦がれる憧れの存在というより、優良物件なのだ。 「あのさ、俺勉強したいからもういい?」     
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