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天空島高校は県立でありながら、その独特の成り立ちのせいでまるで私立のような学習プログラムを行っている。高校三年間で習う授業を二年間で終わらせ、残りの一年間は大学受験の勉強、または天空島研究所の所員採用試験に備えた受験勉強を行う。どちらも同じく翌年二月にある試験目掛けて全力で向かっていく、というちょっと特殊な進学校というわけだ。 ただ、一学年二十名のうち大学に進学する生徒は片手で足りるほどしかいない。「天空島、延いては日本の将来を担う若者を育成する」を目的に創設された高校らしく、ほとんどが研究所を目指している。そのため、一流大学への進学を目指す者は一年間ほぼ自習に費やすというのが現状だったが、優秀な彼らが怠けるなんてことは一切ない。果ては、政治家、弁護士、医者と言われ、就職組にとっては自分たちを超えていった存在として、一目置かれている。 「進学組って本当勉強好きだよねぇ」 大学否定派の結夏がつまらないものを見るような視線を送る。 「大学なんて行って何の意味があるの? 飲んで遊んでるだけじゃん」 とてつもない偏見を浴びせる結夏に、「真剣に勉強してる人、たくさんいると思うよ」と反論すると、「わたしは絶対大学なんて行きたくない」と言って、持論を並べた。 そもそもあんたじゃ無理だろ、と心の中で毒づきながら、凛は、真剣に机に向かう彼らに限ってそんなことはないだろうと思った。彼らは間違いなく意味のある四年間を経て、わたしたち就職組には見ることのできない世界へ飛び立っていく。凛にはそれが、大きな翼で自由に空を飛ぶ鳥のように思えた。     
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