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ただ、このような状況そのものが、雪彦にとって耐え難いことなのだろう。幼い頃から勉強がすべてだった自分の遺伝子を受け継いでいるはずの我が子が、優秀でないなんて認めることができない。あっという間にモンスターと化した雪彦は、凛の成績表を見る度に暴れ狂った。 凛はそんな状況下に何年も置かれたせいで、天空島に憧れなど一片も持っていない。世界に類を見ない先進的な技術や、デザイナーズアイランドと呼ばれる都市開発の美しさ、それでいて自然溢れる環境など魅力ばかりの天空島を、凛だけはこれから何十年も続いていく地獄の舞台と認識していた。 自分には、大空を飛ぶ翼なんてない。実の親に毟り取られた羽を、凛は心の奥の引き出しにそっと仕舞って生きていた。
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