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3
トイレから戻ると、頭上で予鈴が鳴った。気付いていないように話を続けるクラスメイトの隙間を縫って席に着く。
教室の真ん中でわっと歓声が上がり、輪の中心で田井栄が他の男子の頭をぺちんと叩いた。周りがそれを見てケラケラ笑う。叩かれた本人も楽しそうだ。
背が高く、体格のいい彼は、どんな時でも存在感があって目立っている。反応の良い栄に話を聞かせたいがために周りに集まってくるクラスメイトたちに、順番に話を振っては適度な相槌とツッコミでその場を回す姿は、まるで名司会者だ。底抜けに人の良い彼は、いつだって笑顔に満ちて幸せそうで、凛は時々、栄が画面の向こう側の人のように思えた。
話の切りが良いところで、栄が呼びかけ、取り囲んでいた生徒たちがそれぞれの席に着く。明るくて、人気者で、それでいて真面目でもある。彼を中心に回る世界はいつも健全で澄んでいる。
本鈴と同時に、先ほど教室を去ったばかりの倉橋が戻ってくる。前方のドアから入ってきた倉橋を見て、全員の鼓動が一拍飛んだ。
「え、先生どうしたの?」
「やばっ! なになに?」
「これ、気になるよね。まぁ後で説明するから。とりあえず号令!」
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