4/33
前へ
/201ページ
次へ
倉橋は電子黒板に「俺も久しぶりに見るから何が映ってるかわからないけど」と前置きして、映像を流した。それは、十三年前の震災翌日から始まった。目の前に立つ三十歳の倉橋と同じ学生服を着た少年が、被災した東京の街をレポートしていく。 『どうも、ノボルです。昨日のお昼に、東京で大きな地震があったんだけど、記録用に周りの様子を撮影しておきたいと思います』 「この時ちょうど高三だったから、今のみんなと同い年だなぁ」 インカメラで撮影しているのか、目一杯に映し出された顔は、確かにこのクラスにいてもおかしくないような幼さを宿している。声もなんだか少し高いみたいだ。 始まりは、彼の家の前だった。向かって右側が瓦礫と化した一戸建ての住宅が縦長の画面いっぱい映っている。 『はい、僕の家です。家族にも会えたので、とりあえず荷物でも取りに行こうと思って来てみました。やばいです。昨日の今頃は、普通にここで暮らしていたのに、うちじゃないみたいにぐちゃぐちゃです』 半壊している玄関の前で、母親らしき女性が玄関のドアが開くかと試している。当時はもう玄関も電子化していたので、こうなっては動かないだろう。どうしたものかと唸っている。     
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加