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窓の隙間から土足のままリビングに上がる。母はこんな時こそ逞しい。床に落ちているエコバッグを開いて、食器棚の下の引き出しから食料品を目一杯詰め込んで寄越した。入りきらないカップラーメンは、戸棚に詰めてあった紙袋と一緒に倉橋に押し付けた。
『あんた、これ入れといて』
近くにあったティッシュケースも咄嗟に追加する。
『じゃあ、お母さん二階行って貴重品取ってくるから。中入っちゃだめだからね!』
焦っているせいもあるのだろう。わかったね! と語尾を荒げた。
『あ、そしたら父さんのカメラ持ってきて! テーブルの横の引き出しにあるから!』
『はいはい、わかったから! そこにいてよ!』
『お母さん、まめちゃんのドッグフードも持ってきて!』
聞こえたのか聞こえていないのか、返事もなく母親は二階へ消えていく。
『そうか、まめ太のリードも持ってこないとまずいな。しばらくは避難所生活だろうし、お前がずっと抱っこしてるわけにもいかないし』
『わたし、大丈夫だよ! わたしまめのこと離さないもん。ね、まめ~』
抱きしめたまめ太に頬ずりをする。犬の方も心細いのか薫にすり寄った。
『あほか、これから何日もこのままなんだぞ、腕死ぬぞ』
むすっとする妹を征して『お前、ここにいろ。俺、ここから入って玄関行ってくるわ。ついでにフードも持って来るから、母さん帰ってきたら言っておいて』と、まめ太の頭をぐりぐりと撫でてから土足のまま家に入っていく。
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