2

1/14

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ

2

三十分ほど自転車を走らせた後、最寄りの駅からは電車に乗って新茅ヶ崎駅に向かう。地元から新茅ヶ崎駅は約一時間。下りの電車は時間のせいもあって人の入りはまばらだ。 新茅ヶ崎駅からは、一日に八本しかない定期便に乗って、学校のある天空島に向かう。合計二時間、なかなかの長旅だ。 都心へ向かう人の流れに逆らって天空島ゆきの定期便のりばへ向かうと、八時発のドローンがエアポートにスタンバイしている。不似合いに広い待合室を抜けて、カジェットを乗り口の精算機に翳す。最近新しいものが導入されて、かなり規模が縮小されたので、広い改札口の中にぽつんとポールが立っている。それが余計に虚しさを誘った。 乗客はいつも、凛を入れても十五人ほどしかいない。街で見かければ、声を掛けずとも誰だかわかる。名前こそ知らないが、みんな顔見知りだ。 「松上、おはよう」 乗り込んですぐに声をかけられて顔を向けると、同じクラスの瀬乃啓介と本田明希が横並びに席に着き、おにぎりや菓子パンを齧っていた。機体中服の壁沿いの席は、彼らの定位置だ。 「おはよう」 毎朝の通り瀬乃の隣に座ると、リュックを下ろして座席の下に押し込んだ。     
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加