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彼女が最後に遺したものは。
決めていたことだった。
最近決めたことではない。もう何年も前から。
少なくとも、初めてあなたと話をした時から。
決めていたことだった。
このひとだけは守り抜こう。このひとだけはわたしの命に代えても、守り抜くと。
そう、決めていたのに。
わたしは馬鹿だ。何が正義の魔女だ。何が白魔術だ。せっかくお母さんから受け継いだ魔法も、知識も、何も生かせていないじゃないか。こんな方法でしか、きみを守ることができないなんて。これじゃ本当に???物語の中の、悪い魔女じゃないか。断罪され、処刑されても仕方がないほどの。
声が聞こえる。泣き叫ぶ声だ。声の主はわかる。十三年間、片時も離れなかった、離れることをわたしが怖がった、わたしの大好きなきみが泣き叫んでいるんだ。わたしを助けるようにと、全力で皆に嘆願している。それと同時に、わたしに怒鳴っている。何でおまえは魔女じゃないのに黙っているんだ、ばかやろう。と。
彼と私はたった数メートルしか離れていないのに、どこか遠くにいるように聞こえるのは、連日の拷問の所為だろう。
多分、精神的な面も含めて、体が参っているんだ。
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