鏡の前

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「ウワサを試してみたい。」 まゆちゃんの突然の発言に私は食べていたものを吐き出しそうになりました。 「やめようよ。怖いじゃない」 「ウワサはウワサ。それ以上のことはないよ。だいじょうぶ。」 まゆちゃんは、なにもおこるはずはないと言わんばかりの態度で今日やろうと私を誘うのです。 私がモジモジ決めかねていると 「もう、だいじょうぶだから!放課後残ってね!」 「・・・うん」 わたしは押し切られるように、まゆちゃんと残ることになりました。 放課後、午後4時40分頃に私たちは鏡の前に立ちました。ベージュのペンキに塗り潰されて、時間の経過でだいぶ塗装は剥がれた鏡は、うっすら私たち2人の影が映りこんでいました。 まゆちゃんはお父さんの腕時計を持ってきており、秒針をにらみながら 「もうすぐね。」 とか言っています。 午後4時43分50秒 「10.9.8.7.6.5...」 秒を数えるまゆちゃんは、楽しそうに見えました。 「ゆうちゃん、ゆうちゃん迎えに来たよ。」 すこし大きめの声でまゆちゃんは、言いました。午後4時44分です。時計の針は過ぎてゆきます。野球部の声が聞こえるだけでなにもおきません。
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