これ…怒られないかな…

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それもそうだ。屋根の上で追いかけてくる商人の部下は暗殺を生業としている。いわゆる暗殺者(アサシン)だ。僕は再生が終わるのを見計らって、ダンピールの子に口を離させ、立ち上がる。 「もうちょっと吸ってたかった…」 「これを片付けたら僕の家に案内する。それからまた吸ってもいいから。追手来てるからね。」 ダンピールの子は残念そうな顔をして、屋根に座って待っている。だが、他の2人は言葉のおかしいところに気付いたようだ。 「これを片付ける?これって追手の事じゃないのか?」 「うん。追手の事だよ。」 「追手ならまだ来る気配は無いぞ?」 そう言っている、力の強い女の子の元に暗殺者が走って来る。剣が届く範囲になると、暗殺者は剣を振り上げ、 「!?」 その剣を弾かれる。そりゃそうだ。風で剣の型を作り、固めた空気をその中にいれて、剣を作る。その剣を風で操り、弾き返したのだ。勿論その剣は、 「…呪いの剣嵐(カースドテンペスト)!」 僕の愛剣。さっき貴族に向けたあの剣なのだ。 「貴様!何者だ!何故感知できる!何故奴隷の味方にする!」 「あっれー?覚えてないんですかぁ?僕はぁ…」 左大臣の証を、スカートから取り出して見せる。 「左大臣の異世界人。ですよぉ?」 その言葉に、暗殺者共はたじろぎ、奴隷の女の子3人は唖然としている。しばらくその状態だったが、 「貴様等!雇い主の為に、こやつを殺してでも奴隷どもを取り戻せ!」 暗殺者のリーダーの一声で、暗殺者共は気配を消して、僕に向かって色んな方向から剣を振り下ろす。食らえば死んでしまうだろう。食らえばだけどね。 「なにっ!?」 驚きの声を、暗殺者のリーダーがあげる。そうだろう。僕の愛剣が霧散し、暗殺者共の剣の前に、受け止めるように霧散したはずの剣が出現したのだから。それも、暗殺者の数、6人に合わせ、6本の剣が。一本たりとも違う剣はない。全てあの剣なのだ。 「さっき…何者だと聞いてきましたよね?言ってあげましょう。僕は…」 ショーの終わりにやるような、大きなお辞儀をして、言う。 「僕らは感情豊かな道化達(カラフルピエロ)。僕は魅惑の道化(テンプーションピエロ)。笑い、泣ける物語を魅せましょう。愛に翻弄され、喜劇になる。哀に翻弄され、悲劇になる。」 僕は顔を上げ、手を大きく広げ、言い放つ。 「さあ皆々様方!運命に翻弄され、喜劇を!悲劇を!惨劇を!ご覧下さい!」
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