お父さん反省。

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お父さん反省。

来年俺も還暦か…ゆかりの家から逃げるように出てきた私はそんな事を考えながら歩いていた。 はぁ…歳をとったものだな…。 自嘲気味に笑うと少しペースを落として歩き始めた。 歳ばかりくって何をしてるんだ! 自分のしたことが猛烈に恥ずかしくなって居たたまれなくなった。そしてそんな自分の過ちを謝る事も出来ず、恥ずかしさから訳のわからないことをくちばしって家を飛び出してきてしまった。 まぁ、逃げたと言う方が正解か… 何を考えていたのか…。 さっきまでの私は、ゆかりの間違った人生のレールを親としてまっすぐにひき直さなくては!そして別れさせ本当の人生をあゆませるのが親としての責任だと、本気で信じて疑っていなかった。 …どんな傲慢だ! あかねさんという、娘より若い子に諭されて過ちに気付いたものの、それを素直に認め、謝ることも出来ず逃げ帰る爺さん… うっ!恥ずかしい!穴があったら入りたい!! ゆかりにも…恥をかかせたな…。 ともすれば叫びだしたい気持ちでいっぱいになるので、私は夜道を赤面しながら足早に歩き続けた。 そこで不意に思い出した…大嫌いだった自分の父親の事を…。 父は田舎者特有の頑なさと頑固さを併せ持つ厄介な昔気質の人間で口癖は 「俺の言う通りにしていれば間違いない」 だった。 私はそんな父に人生を押し付けられ、苦労している母や兄弟達を見てきた。だからこそ、絶対にこんな人間にはなるものか! そう強く思っていたのに…。 それがどうだ!さっきまでの私は大嫌いだった父そのものだった… 何をやってるんだ!俺は! 家にまで押し掛け自分の思い通りにゆかりの人生を変えさせようとした…。 ゆかりが就職した時、独り暮らしを始めるゆかりに、後はお前の人生だから好きなように生きなさい。なんてカッコつけて言ったくせに…いざ自分の中の許容範囲を超えてこられたら、取り乱し、慌てて怒鳴って押さえつけようとした。 あの時の父と自分のなにが違うと言うのか! 私はゆかりを傷つけ、あかねさんにも迷惑をかけた…。 いつか…機会を作って2人に謝りたい。 でも今はまだ、どうにも俺の中のオヤジがまだくすぶっていて、素直に謝ることができなかった…。 そんな自分を笑いながら家路を急ぐ…。 あぁ…母さんにまた叱られる… しばらくはお茶漬け生活覚悟だな
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