惨月

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「‥‥あの惨月はサトノの『影』じゃぁない。アレは‥‥マスミさん、アナタが鬼に奪われた『影』なんだ! アナタの狂気が生み出した『惨月』なんだよ!」 「あ‥‥あの『惨月』がアタシの‥‥?」 マスミが、呆然としている。 「ああそうだ。マスミさんは知っていたんだよね? サトノにボクを殺す理由が無い事を」 そうだ。サトノが『ボクには幸せになって欲しい』と願っていたのなら、ボクを殺そうとする筈はないし『影』を奪われるような悪意もなかったはず。そして‥‥ 「マスミさんは、サトノの『影』が悪さをする理由が無いのを知ってたんだろ? だからボクの心霊体験も『何かの錯覚なのだろう』と考えた。けど、ボクに『それは恐ろしいサトノの霊だ』と思わせれば『ボクにサトノを忘れさせる事が出来る』と考えたんじゃないのかい?‥‥そのために、あの『童歌』を利用したんだ」 だが、伝説は嘘では無かった。  鬼は、サトノではなく『マスミの悪意』を嗅ぎ取って『影』を奪ったのだ。 「ボクがカミソリで喉を切られそうになった時に‥‥多分、部屋中に残っている『サトノの記憶』を見てマスミさんはサトノに嫉妬したんだ。その『妬み』が『ボクに対する怒りの感情』となり、惨月に殺意を与え‥‥惨月はボクを殺そうとしたんだ。どうだろうか。思い当たらないかい?」 「‥‥。」     
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