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変色と損傷が激しいが、それでも『その布片』は彼女が気に入っていたタータンチェックのスカートと同じ柄だ。
靴もあった。
彼女の靴は左右で微妙な調整がしてある特注品で‥‥眼の前にある、赤茶けて薄汚れた物と同じ形だ。
「み、見る限り、同居している『彼女』の‥‥『廃川サトノ』の可能性が高いかと‥‥」
言葉を選び、何とか声を絞り出す。
信じられないのは無論だ。だが、少なくとも『彼女』と相違する点は見当たらなかった。
「‥‥では、もう結構です。とりあえず調書をとりたいので、こちらへ」
さきほどの警察官がボクの背中に手を当て、部屋に戻るよう促した。
「‥‥そうですか。では、廃川さんは今日の夕方から連絡が着いていなかったと?」
聴取をする隣では、若い警官が黙って書き取りをしている。
「はい‥‥。それで心配になって、警察へ連絡をしましたら『2時間ほど前、電車で人身事故があったのだが、その被害者と共通点が見られるので署まで来て欲しい』と言われまして‥‥」
『人違いであって欲しい』そう思うのだが。
「‥‥お気の毒です。ああ、そうそう。ご自宅からお持ち頂いた廃川さんの『化粧筆』ですがね。たった今、鑑識から回答が来ました。『被害者の指紋と一致した』そうです。なので、確定という事で話をいたしますが‥‥」
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