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マジで?タキシードと薔薇なんて昭和初期だろ・・・。俺は日本男児の美的感覚に眩暈がした。
「彼女さんが237便に乗ってるんだってさ。遅れてるらしいけどね・・・」
「そう・・・。見てく?」
「やめてやれよ!可哀そうだろ?」
まったくとんでもない奴だ。俺はしぶる彼女の手を引いてそのままターミナルを出ると、車に乗り込んだ。
「ちっ!見たかったなぁ・・・」
「ただでさえ緊張するんだし、そろそろ練習でもさせてやろうぜ」
邪魔した俺が言うのもなんだけどな・・・。
「あれ?でも、237便なんてあったかな?」
その言葉で少しだけ時が止まる。
「おいおい、ホラーになるからやめてくれよそういうの。なきゃ待ってるわけないだろ?」
「それはそうだけど・・・」
歯切れの悪い彼女の言葉を無視し、俺は車を出すとすぐに空港ターミナルの姿は小さくなっていき、いつもの交差点に差し掛かかると、大きな立て看板が目に付いた。
看板は告げる『2020年、237便運航開始』。
背中に冷や汗が流れるのを感じ、俺はただ『頑張れよ』と声にならないほどの小さな声エールを送ったが、
きっとそれは
俺に良く似た誰かの為。
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