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待ち合わせ
それはシンシンと体の底から冷えるような日に、わざわざ空港ターミナルまで足を運んだ日のこと。電光掲示版が光る広いスペースの中、俺は旅行会社の広告があっちへ行けこっちへ行けと囃し立てる支柱を背にして、せかせかと行きかう人の群れに目を向け途方に暮れていた。
「・・・遅ぇ」
世にいう待ちぼうけという奴だ。即席麺の出来上がりは3分で、全国各所で救急車を呼び寄せた時にかかる平均時間は8分と言う。ならば、午後2時を約束の時刻として既に一時間もの時間を無駄にした俺には一体何ができたであろうか?大したことはできないだろうが、すくなくとも今よりは有意義な時間が過ごせたんではないか?そう思うと自然と口からは密度の高い吐息が漏れた。
「はぁ・・・」
携帯に受信はなく、常人であれば何かあったのでは無いかと勘ぐり始める頃合いだが、これが記念すべき二桁目を迎える出来事となった今では、もはや定刻に現れることの方が驚きだ。俺は腕を組んで再び支柱に身を預けると、得意の暇潰しをしようと周りの人間を物色し始めると一人の男が目に飛び込んだ。
「ははっ。いいのがいるな・・・」
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