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『桜は大きくなったけど
僕はまたジイサンになりました』
あなたから来る年賀状。
私達の最初で最後の夜のあと、
あなたが庭に植えた桜が一本、
幹を座らせ枝葉を付けて・・・
年賀状に写る、あなたの代わり。
ただ日々淡々と
月日は経つものなのだ・・・
それはやはり、かけがえのない幸福・・・。
私はあなたを愛していたけれど、
自分の家庭を壊す勇気もなかった。
弱いのに、卑怯なくせに、辛抱もなく、
「今夜だけ・・・」
あなたを確める夜を持ってしまった・・・。
二度三度は不幸を呼ぶに違いない・・・
翌朝二人で一言神社、
『元旦の夜だけは
想い出させて下さい』・・・と。
夫の寝息を確かめて寝室を出て縁側へ。
一年をあなたは無事に暮らしてた・・・。
ただそれだけで嬉しい年賀状。
あなたを恋しいと哭く胸に、乳房に、
ぎゅっと・・・抱きしめる・・・。
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