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「菖蒲」
「...な、んでしょうか」
すでに振り返っているのになぜかまた名前を呼ばれたことで変な空気になってしまったのを打開しようと、恐る恐る返事をする。
怒らせたくない。この人は絶対怖い。
「怪我してんの?そこ」
幸村先生は私の右腕を指差しながら、思いもよらない質問をした。
どうしよう。
早速、バレた。というか幸村先生と話すの初めてなのに。いや、目が合ったのだって初めてだ。なのに、なんで…
「いや別に、大したこと無く...」
「くそ暑い卓球場であんただけ涼しい顔してジャージ着てるから」
被せ気味で聞いてもない理由を言われた。
くそ暑いのに涼しい顔してるのは私だけじゃない。そこら中にサボり魔たちが彷徨いてる部活だ。
まさかのまさかだけど、それだけで気づかれたってこと?もしかしてカマかけられてる?私が「実は...」って怪我のこと言い始めたら負け、的な。
二年間も隠し通していたのに。主顧問にも気付かれたことないのに。
こうなったらヤケだ。言ってやる。
「怪我してますよ」
「練習適当なのになんで怪我してんの」
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